はじめに
アルカリ性は、化学的な基本特性のひとつであり、私たちの日常生活や産業において幅広く活用されています。アルカリ性の物質は、酸と対になる塩基性の性質を持ち、洗浄力の強い洗剤、食品添加物、建築材料、化学工業など、さまざまな場面で利用されています。
本記事では、アルカリ性の定義や化学的特徴、環境や産業への影響、そして安全な取り扱い方法について詳しく解説します。
アルカリ性の基本的な定義とその重要性
アルカリ性とは、水に溶けたときに水酸化物イオン(OH⁻)を放出する性質を指します。一般的に「塩基性」の一種であり、酸性と反対の性質を持ちます。アルカリ性の水溶液は、酸と中和反応を起こし、塩と水を生成する特徴があります。
アルカリ性の重要性は、多くの分野で見られます。
- 洗浄作用:アルカリは脂肪やタンパク質を分解しやすく、洗剤や石鹸に利用される。
- 食品加工:ベーキングソーダ(炭酸水素ナトリウム)がパンや菓子の膨張剤として使われる。
- 工業用途:紙の漂白、ガラス製造、金属の精錬などに利用される。
- 環境調整:酸性の土壌を改良するために消石灰(Ca(OH)₂)が用いられる。
pHスケールにおけるアルカリ性の位置付け(pH 7より大きい)
pH(ペーハー)とは、水溶液の酸性・アルカリ性を示す尺度であり、0〜14の数値で表されます。
- pH 7未満:酸性(例:レモン汁、胃酸、酢)。
- pH 7:中性(例:純水)。
- pH 7以上:アルカリ性(例:石鹸水、アンモニア水)。
アルカリ性の水溶液は、水酸化物イオン(OH⁻)を多く含むほどpHが高くなります。例えば、
- pH 8〜9:弱アルカリ性(例:海水、重曹水)。
- pH 10〜11:中程度のアルカリ性(例:アンモニア水)。
- pH 12〜14:強アルカリ性(例:苛性ソーダ、水酸化カリウム水溶液)。
このように、pHが高いほどアルカリ性が強く、その分皮膚や環境への影響も大きくなるため、注意が必要です。
日常生活や産業でのアルカリ性の利用例
アルカリ性の物質は、私たちの身の回りで多くの用途に活用されています。以下のような例が挙げられます。
1. 家庭での利用
- 洗剤・石鹸:水酸化ナトリウム(NaOH)を使った石鹸や洗剤が、油汚れやタンパク質の分解に活躍。
- 漂白剤:次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が含まれるアルカリ性の漂白剤が、カビ取りや除菌に使用される。
- 食品添加物:ベーキングソーダ(NaHCO₃)が、パンやケーキを膨らませるために用いられる。
2. 工業・農業での利用
- 金属加工:水酸化ナトリウムが、アルミニウムの精錬や鉄の脱錆処理に利用される。
- ガラス製造:炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)が、ガラスの融点を下げるために使用される。
- 農業:消石灰(Ca(OH)₂)が、酸性土壌のpHを調整し、作物の生育を助ける。
3. 環境・医療分野での利用
- 水処理:酸性の排水を中和するためにアルカリ性物質が使用される。
- 医薬品:水酸化マグネシウム(Mg(OH)₂)は制酸剤(胃薬)として利用される。
- 消毒:アルカリ性の消毒剤が、病院や食品工場で使用される。
このように、アルカリ性物質は生活のさまざまな場面で役立っています。しかし、強アルカリは人体や環境に悪影響を与える可能性があるため、適切な取り扱いが必要です。
本記事では、アルカリ性についての基本概念から、環境・産業への影響、安全な取り扱い方法まで詳しく解説します。アルカリ性の性質を正しく理解し、日常生活や産業で安全に活用するための知識を深めていきましょう。
アルカリの定義と化学的特徴
アルカリとは、一般に水に溶解して塩基性を示す物質のことを指します。これらの物質は水中で水酸化物イオン(OH⁻)を放出し、pHが7より大きい水溶液を形成します。アルカリは化学や工業、日常生活の多くの分野で重要な役割を果たしており、例えば石鹸や洗剤、食品加工、農業などに利用されています。
アルカリとは何か?(水に溶けて塩基性を示す物質)
アルカリは水に溶解して水酸化物イオン(OH⁻)を生成する塩基性物質を指します。塩基の一種ですが、特にアルカリ金属(水素を除く1族元素)やアルカリ土類金属(2族元素)の水酸化物は強いアルカリ性を示します。
アルカリ性水溶液は、一般的に以下のような特徴を持っています:
- pHが7より大きい(通常、強アルカリではpH 10以上)。
- 水溶液にするとぬるぬるした感触がある(皮膚の脂肪を鹸化するため)。
- 酸と反応して中和反応を起こし、塩と水を生成する。
- フェノールフタレイン溶液を赤色に変化させる。
- 指示薬のリトマス試験紙を青色に変化させる。
アルカリと塩基の違い(アレニウスの定義、ブレンステッド・ローリーの定義)
アルカリは塩基(ベース)の一部として分類されますが、すべての塩基がアルカリであるわけではありません。ここで、塩基の定義を整理すると、次のようになります。
- アレニウスの定義: 水中で水酸化物イオン(OH⁻)を放出する物質を塩基とする。
- ブレンステッド・ローリーの定義: 水酸化物イオンの有無に関わらず、水素イオン(H⁺)を受け取る物質を塩基とする。
この違いにより、例えばアンモニア(NH₃)は水酸化物イオンを直接放出しないため、アレニウスの定義では塩基に含まれません。しかし、水中で水素イオン(H⁺)を受け取ってアンモニウムイオン(NH₄⁺)と水酸化物イオン(OH⁻)を生じるため、ブレンステッド・ローリーの定義では塩基と見なされます。
水酸化物イオン(OH⁻)との関係
アルカリは水に溶解した際に水酸化物イオン(OH⁻)を放出し、これが塩基性を示す主要な要因となります。
例えば、代表的なアルカリ性物質である水酸化ナトリウム(NaOH)が水に溶けると、次のような反応が起こります。
NaOH → Na⁺ + OH⁻
このOH⁻が多く存在するほど強いアルカリ性を持ちます。水酸化物イオンは以下のような重要な役割を果たします。
- 酸との中和反応: 酸と結びついて水(H₂O)を生成し、中和する。
- 金属イオンと沈殿を形成: 一部の金属イオン(Mg²⁺、Fe³⁺など)と反応して難溶性の水酸化物沈殿を作る。
- 有機物との反応: 例えば、タンパク質や脂肪を分解するため、石鹸の製造や洗剤の成分として利用される。
代表的なアルカリ性物質(NaOH、KOH、Ca(OH)₂ など)
アルカリにはさまざまな種類がありますが、特に代表的なアルカリ性物質として以下のものが挙げられます。
- 水酸化ナトリウム(NaOH): 強いアルカリ性を持ち、「苛性ソーダ」とも呼ばれる。石鹸や紙の製造、化学工業などで広く使用。
- 水酸化カリウム(KOH): NaOHと類似するが、特に液体石鹸や電池の電解液に利用される。
- 水酸化カルシウム(Ca(OH)₂):「消石灰」とも呼ばれ、土壌改良や建築材料(漆喰)に使用。
- 水酸化マグネシウム(Mg(OH)₂): 胃薬(制酸剤)として利用されるほか、耐火材にも使用。
これらの物質はそれぞれ異なる用途を持ち、工業、農業、医療など様々な分野で活用されています。
アルカリは化学的性質が強く、適切に取り扱わないと皮膚や目に深刻な影響を与える可能性があります。そのため、適切な防護策を講じながら使用することが求められます。
アルカリの語源と歴史
アルカリという言葉は、古代から人々の生活や化学の発展に深く関わってきました。その語源はアラビア語に遡り、石鹸作りや洗剤としての利用から錬金術の時代を経て、現代の化学へと発展してきました。本章では、アルカリの語源とその歴史的な役割について詳しく解説します。
アルカリの語源(アラビア語 al-qily に由来)
「アルカリ(alkali)」という言葉の語源は、アラビア語の「al-qily(القلي)」に由来します。この言葉は「植物の灰」を意味し、特に炭酸カリウムや炭酸ナトリウムを豊富に含む灰を指していました。
中世のイスラム世界では、この「al-qily」を水に溶かすと強い洗浄力を示すことが知られていました。そのため、衣類の洗濯や金属の精製、医療目的での使用が広まりました。このアラビア語の単語は後にラテン語の「alcali」として取り入れられ、さらに英語やフランス語を経て現在の「alkali」という言葉へと発展しました。
古代の石鹸作りや洗剤としての使用
アルカリの最も古い用途のひとつは、古代メソポタミアやエジプトにおける石鹸の製造です。紀元前3000年頃には、すでにアルカリを含む灰を水に溶かし、油脂と混ぜることで石鹸を作る技術が存在していました。
この石鹸の作り方は、現代の石鹸製造とほぼ同じ原理であり、次のような鹸化(けんか)反応を利用しています:
脂肪 + アルカリ(NaOH または KOH) → 石鹸 + グリセリン
この技術は後にギリシャ・ローマ文明にも伝わり、古代ローマでは「サポン(sapo)」と呼ばれる石鹸が作られました。これは、現在の「ソープ(soap)」という言葉の語源にもなっています。
また、アルカリを含む植物の灰を洗剤として使用する文化は、中世ヨーロッパでも広まりました。特に、羊毛の洗浄や布の漂白に用いられ、工業的な発展にも寄与しました。
錬金術と化学の発展におけるアルカリの役割
中世に入ると、アルカリは錬金術(アルケミー)の中で重要な物質として扱われるようになりました。錬金術師たちは、さまざまな化学反応を試みる中で、アルカリの金属の精錬や薬品の製造への応用を発見しました。
代表的な錬金術師であるジャービル・イブン=ハイヤーン(Jabir ibn Hayyan)(8世紀)は、アルカリ性物質の研究を行い、酸と塩基の中和反応についての概念を確立しました。彼の研究は、のちのアレニウスの酸・塩基の理論へとつながる基礎となりました。
また、15世紀から17世紀にかけて、錬金術は近代化学へと発展し、アルカリの工業的な利用が進みました。
- 16世紀:ガラス製造におけるアルカリの利用(炭酸ナトリウムを原料として使用)。
- 17世紀:化学者ロバート・ボイルによる「アルカリ」と「酸」の明確な区別。
- 18世紀:ニコラ・ルブラン(Nicolas Leblanc)による炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)の工業的製造法の確立。
このように、アルカリは洗剤や石鹸の原料としての利用から始まり、錬金術を通じて科学的な知識が発展し、近代化学の基礎を築く重要な要素となりました。
現在では、アルカリは食品加工、医薬品、工業製品、農業など、私たちの生活のあらゆる分野で欠かせない物質となっています。
アルカリ性物質の種類と用途
アルカリ性物質は、化学的性質や用途によって様々な種類に分類されます。主にアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアや炭酸塩などの化合物が含まれ、工業、農業、食品分野など幅広く利用されています。本章では、それらの種類と具体的な用途について詳しく解説します。
アルカリ金属・アルカリ土類金属の水酸化物(NaOH、KOH、Ca(OH)₂)
アルカリ性物質の中でも最も強いアルカリを示すのが、アルカリ金属(Na、K など)やアルカリ土類金属(Ca、Mg など)の水酸化物です。
代表的なアルカリ金属の水酸化物
- 水酸化ナトリウム(NaOH):苛性ソーダとも呼ばれ、強アルカリ性を持つ。石鹸、洗剤、紙の製造、化学合成などに使用される。
- 水酸化カリウム(KOH):苛性カリとも呼ばれ、NaOHと類似した性質を持つ。液体石鹸の製造や乾電池の電解液に使用される。
代表的なアルカリ土類金属の水酸化物
- 水酸化カルシウム(Ca(OH)₂):「消石灰」として知られ、農業用土壌のpH調整や建築材料(漆喰)に使用される。
- 水酸化マグネシウム(Mg(OH)₂):制酸剤(胃薬)や耐火材に利用される。
これらの水酸化物は、水溶液中で水酸化物イオン(OH⁻)を放出し、強い塩基性を示します。
アンモニアや炭酸塩などのアルカリ性を示す化合物
アルカリ性を示す物質には、水酸化物イオン(OH⁻)を直接放出しないが、結果的に水溶液をアルカリ性にするものも含まれます。
- アンモニア(NH₃):水に溶けると一部がアンモニウムイオン(NH₄⁺)と水酸化物イオン(OH⁻)に変化し、弱アルカリ性を示す。
- 炭酸ナトリウム(Na₂CO₃):洗剤やガラス製造に使用され、「ソーダ灰」とも呼ばれる。
- 炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃):「重曹」として知られ、食品や医薬品に使用される。
- リン酸ナトリウム(Na₃PO₄):食品添加物や洗剤の成分。
これらの化合物は水中でプロトン(H⁺)を奪う作用を持つため、最終的にアルカリ性の水溶液を形成します。
工業用途(石鹸、洗剤、ガラス製造、農業用土壌調整)
アルカリ性物質は、様々な工業分野で重要な役割を果たしています。
- 石鹸・洗剤の製造:
- 水酸化ナトリウム(NaOH)と油脂を反応させることで固形石鹸が作られる。
- 水酸化カリウム(KOH)は、液体石鹸やシャンプーの製造に使用される。
- ガラス製造:
- 炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)は、ガラスの融点を下げるために使用される。
- 農業用途(pH調整):
- 水酸化カルシウム(Ca(OH)₂)は、酸性土壌を中和し、農作物の成長を助ける。
- 炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)は、特定の作物の生育を助ける土壌改良剤として使用される。
食品におけるアルカリ性(ベーキングソーダなど)
アルカリ性物質は食品加工にも利用されており、特に以下の用途で重要な役割を担っています。
- ベーキングソーダ(炭酸水素ナトリウム:NaHCO₃):
- 加熱すると二酸化炭素(CO₂)を発生し、生地を膨らませる。
- パンやケーキの発酵補助剤として使用。
- かん水(炭酸カリウム+炭酸ナトリウム):
- ラーメンの独特の弾力と風味を生み出す。
- 食品のpH調整:
- アルカリ性の食品添加物は、食品の腐敗防止や食感の調整に使われる。
このように、アルカリ性物質は日常生活の様々な場面で活用されており、化学的な特性を生かして多くの分野で役立っています。
アルカリと環境
アルカリ性の物質は、環境にも大きな影響を与えます。特に土壌や水域のpHバランスに関わることで、植物や動物の生態に影響を及ぼすことがあります。本章では、アルカリ性土壌の特徴、アルカリ湖の例、そしてアルカリ性が生態系に与える影響について詳しく解説します。
アルカリ性土壌とは?(pH 7.3以上の土壌の特徴)
アルカリ性土壌とは、pHが7.3以上の土壌を指し、主に炭酸塩や水酸化物を多く含むことで形成されます。
アルカリ性土壌の特徴として、以下のような点が挙げられます。
- ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩が多く含まれる。
- 土壌の粒子が固まりやすく、水の浸透性が低下しやすい。
- 養分が吸収されにくく、一部の作物の生育に悪影響を与える。
- 微生物の活動が制限されるため、有機物の分解が遅くなる。
アルカリ性土壌は主に乾燥地帯や半乾燥地帯で多く見られ、農業には適さないことが多いため、酸性物質(硫酸など)を加えて中和したり、適切な排水システムを導入することで土壌改良が行われます。
アルカリ湖(例:モノ湖、マガディ湖)
アルカリ湖とは、pHが9以上の高いアルカリ性を示す湖のことを指します。これらの湖は通常、蒸発が激しく、水の流出が少ないため、アルカリ性の成分が濃縮されやすい環境にあります。
代表的なアルカリ湖の例
- モノ湖(Mono Lake, アメリカ):
- カリフォルニア州に位置し、炭酸塩が多く含まれている。
- 水中に特殊なバクテリアやアルカリ耐性の微生物が生息。
- 塩分濃度が高く、魚類は生息できないが、アルカリ耐性のエビや渡り鳥が多く生息。
- マガディ湖(Lake Magadi, ケニア):
- アフリカのグレートリフトバレーに位置し、ナトリウム炭酸塩が豊富。
- フラミンゴの生息地として知られる。
- 鉱業が盛んで、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)の採掘が行われている。
- ナトロン湖(Lake Natron, タンザニア):
- pH 10以上の強アルカリ湖で、高温と蒸発によりアルカリ成分が濃縮。
- フラミンゴの繁殖地であり、微生物が多く生息するが、ほとんどの生物には過酷な環境。
これらの湖は独特の生態系を持ち、通常の淡水湖とは異なる生物群が形成されています。
アルカリ性と生態系への影響
アルカリ性が強い環境は、自然の生態系に様々な影響を与えます。pHの変化によって生物の生存が左右され、特定の微生物や動植物が優勢になることがあります。
アルカリ性環境の生態系への影響
- 水生生物への影響:
- 強アルカリ性の水域では、魚類や甲殻類が生存できなくなる。
- 一方で、アルカリ耐性の微生物(例:シアノバクテリア)が繁殖しやすい。
- 植物への影響:
- アルカリ性土壌では、多くの植物が栄養を吸収しにくくなり、生育が困難になる。
- 一部のアルカリ耐性植物(例:ホウレンソウ、アカシアなど)は適応可能。
- 微生物への影響:
- 土壌や水域のpHが高すぎると、多くのバクテリアや菌類が生存できなくなる。
- 逆に、アルカリ環境に適応した微生物(例:アルカリ好性菌)が増殖し、特定の生態系が形成される。
人間活動による影響
- 工業排水や農業の影響で、水域が過度にアルカリ化することがある。
- 石灰を大量に含む建築廃材の流出によって、土壌や水域のpHバランスが崩れる。
- 排水処理の適正化や、植生の保護が重要な課題となる。
このように、アルカリ性は自然環境にとって重要な要素ですが、過度なアルカリ化は生態系のバランスを崩す原因となります。適切な環境管理が求められます。
アルカリの危険性と安全対策
アルカリ性物質は、工業や日常生活で広く使用されていますが、強い腐食性を持つものもあり、誤った取り扱いによって健康被害を引き起こす可能性があります。本章では、アルカリ性物質の危険性、安全な取り扱い方法、日常生活での注意点について詳しく解説します。
アルカリ性物質の危険性(皮膚や目への影響)
アルカリ性物質の危険性は、その強い腐食作用にあります。特にpH 10以上の強アルカリは、皮膚や粘膜に深刻な影響を与えることがあります。
皮膚への影響
- 皮膚の脂肪を鹸化し、ぬるぬるとした感触を生じる。
- 長時間の接触で皮膚が溶け、化学火傷(アルカリ熱傷)を引き起こす。
- 強アルカリ(NaOH, KOH など)に触れると、初めは痛みを感じにくいが、深部まで組織が破壊される。
目への影響
- 強アルカリが目に入ると、角膜を損傷し、失明の危険がある。
- 影響を受けた場合、すぐに大量の水で15分以上洗い流す必要がある。
呼吸器への影響
- アルカリ性の粉塵やガス(アンモニアなど)を吸い込むと、喉や肺の粘膜を損傷する。
- 濃度が高い場合、呼吸困難や肺水腫を引き起こす可能性がある。
強アルカリの取り扱い方法(保護具の使用、希釈方法)
強アルカリを安全に使用するためには、適切な防護策が不可欠です。
保護具の使用
- ゴム手袋:皮膚への直接接触を防ぐ。
- 保護ゴーグル:目を守り、万が一の飛散による被害を防ぐ。
- 防護服・エプロン:作業時の衣服や皮膚の保護。
- マスク:アンモニアや粉塵の吸入を防ぐ。
希釈方法
強アルカリを水で薄める際は、慎重に行う必要があります。
- 必ず「アルカリを水に加える」(逆にすると発熱して飛び散る危険がある)。
- 冷水を使用し、少しずつ加えてよくかき混ぜる。
- 適切な容器(耐薬品性のあるもの)を使用する。
事故発生時の対処
- 皮膚に付着した場合:すぐに大量の水で洗い流す。
- 目に入った場合:すぐに15分以上流水で洗浄し、医療機関を受診。
- 吸入した場合:新鮮な空気のある場所へ移動し、異常があれば医師の診察を受ける。
日常生活での注意点(洗剤や漂白剤の適切な使用)
アルカリ性の洗剤や漂白剤は家庭でも広く使われていますが、誤った使用は健康や環境に悪影響を与える可能性があります。
アルカリ性洗剤・漂白剤の例
- 水酸化ナトリウム(NaOH)を含む洗剤:排水管クリーナー、強力油汚れ洗剤。
- 炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)を含む洗剤:洗濯用洗剤、食器洗剤。
- 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む漂白剤:カビ取り剤、台所用漂白剤。
適切な使用方法
- 使用時は換気を十分に行う。
- 酸性洗剤と混ぜない(有毒ガスが発生する危険あり)。
- 必ず使用量・濃度を守る(過剰使用は危険)。
- 手袋やゴーグルを着用し、皮膚や目への直接接触を避ける。
子供やペットの安全対策
- 洗剤・漂白剤は子供の手の届かない場所に保管する。
- 使用後はしっかりとキャップを閉め、密閉保管する。
- 誤飲した場合はすぐに医療機関へ連絡し、指示を仰ぐ。
アルカリ性物質は私たちの生活に役立つ一方で、適切な取り扱いが必要な危険物質でもあります。使用時の注意点を守ることで、安全に活用することができます。
まとめ
本記事では、アルカリ性の定義とその性質、アルカリ性物質の種類と用途、環境への影響や安全対策について詳しく解説しました。アルカリ性の物質は私たちの生活に広く関わっており、その理解が安全な取り扱いと有効活用に繋がります。
アルカリ性の定義とその重要性を再確認
アルカリ性とは、pH 7より高い水溶液の性質を指し、主に水酸化物イオン(OH⁻)を放出する塩基性物質によって生じます。代表的なアルカリ性物質には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)などがあります。
アルカリは以下のような重要な特性を持ち、幅広い分野で利用されています。
- 酸と中和反応を起こし、塩と水を生成する。
- タンパク質を変性させる作用があり、工業や医療分野で活用される。
- 環境に影響を与える可能性があり、適切な管理が求められる。
アルカリ性の応用と日常生活への影響
アルカリ性物質は、私たちの生活のあらゆる場面で使用されています。その代表的な例を以下に示します。
- 家庭用品:
- 洗剤、漂白剤、石鹸などに使用され、油汚れやタンパク質を分解する。
- 重曹(炭酸水素ナトリウム)は、食品添加物や掃除用として利用される。
- 工業用途:
- 紙や繊維の製造、ガラス加工、金属の精錬などに不可欠。
- 水酸化ナトリウムは石鹸製造や排水処理に利用される。
- 医療・食品分野:
- 水酸化マグネシウム(Mg(OH)₂)は制酸剤(胃薬)として利用。
- かん水(アルカリ性物質を含む)はラーメンの独特な食感を生み出す。
- 環境と農業:
- アルカリ性土壌は作物の成長に影響を与え、適切な調整が必要。
- 水酸化カルシウムは農地のpH調整に使用される。
このように、アルカリ性物質は多くの分野で重要な役割を果たしています。しかし、その強い腐食性や環境への影響を考慮し、安全な使用と適切な管理が求められます。
アルカリに関する今後の研究や応用の可能性
近年、アルカリ性物質の新たな応用や研究が進められています。
- 環境負荷の低減:
- アルカリ性廃棄物の処理方法の改良。
- 化学薬品の代替として環境に優しいアルカリ性物質の開発。
- 新素材開発:
- アルカリ金属を利用した高性能電池(例:リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池)。
- アルカリ耐性を持つ新しい工業材料の研究。
- 生物学・医療分野:
- アルカリ環境に適応した微生物の活用(バイオテクノロジー)。
- アルカリを利用した医療技術の開発(例:新しい抗菌技術)。
このように、アルカリ性物質の研究と応用は今後も拡大する可能性があります。持続可能な技術の開発と安全な利用を進めることで、アルカリの特性を活かしつつ、環境との共存を図ることが求められます。
最後に、アルカリ性物質の理解を深めることで、日常生活での適切な取り扱いと、安全な活用が可能になります。今後も新たな研究と応用が期待される分野であり、環境や健康に配慮した利用が求められます。
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