トレンド

ICBM(大陸間弾道ミサイル)とは何?特徴や役割などわかりやすく解説!

ICBM

はじめに

ICBM(Intercontinental Ballistic Missile、大陸間弾道ミサイル)は、射程距離が5,500km以上に及ぶ弾道ミサイルであり、国際的な軍事戦略における重要な柱の一つです。
その最大の特徴は、地球上のほぼすべての地点に到達可能な射程を持つ点にあり、超大国をはじめとする各国において戦略核抑止力の基盤として位置づけられています。
このミサイルは、高速かつ高精度な攻撃能力を備えており、通常は核弾頭の運搬を目的として設計されていますが、その技術の応用範囲は広く、通常兵器や生物・化学兵器を搭載することも可能です。
しかし、実戦ではこれら非核兵器の利用例はほとんどなく、主に核兵器の運搬手段として特化した兵器と見なされています。

ICBMの開発と普及は、冷戦時代における米ソ間の軍拡競争と密接に結びついています。
その歴史は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるV-2ロケット開発にさかのぼり、この技術が戦後の米ソ両国によるミサイル研究の出発点となりました。
特に冷戦期には、ICBMは相互確証破壊(MAD)理論に基づく核抑止力の中核としての役割を果たし、その威力と到達範囲は国際的な政治・軍事バランスに重大な影響を与えてきました。
また、ICBMの技術は、人工衛星の打ち上げや宇宙開発といった民間技術にも転用され、その応用範囲は軍事分野を超えて広がっています。

ICBMは、その射程や速度のみならず、搭載可能な弾頭の多様性においても進化を遂げています。
現代のICBMは、MIRV(Multiple Independently Targetable Reentry Vehicle、複数個別誘導再突入体)と呼ばれる技術を採用しており、一つのミサイルに複数の弾頭を搭載することで、異なる目標を同時に攻撃する能力を持っています。
この技術は、弾道ミサイル防衛(ABM)システムへの対抗手段としても機能し、単一のミサイルで敵の防衛網を突破する可能性を高めています。
また、固体燃料の採用によって迅速な発射が可能となり、即応性の向上や運用コストの削減が実現されています。

しかしながら、ICBMの普及は国際社会における安全保障上の懸念をもたらしており、その拡散を防ぐための条約や協定がこれまでに数多く結ばれてきました。
例えば、START(戦略兵器削減条約)やINF(中距離核戦力全廃条約)といった取り組みは、核兵器を搭載可能なミサイルの削減やその使用の制限を目的としています。
一方で、新興国や非国家主体によるミサイル技術の取得が進む中、これらの取り組みが国際安全保障にどの程度の効果をもたらしているかについては議論の余地があります。

本記事では、ICBMの基本的な定義や特性に加え、その歴史的背景や技術的進化、さらに現代における役割と課題について詳しく解説していきます。
また、ICBMの軍事的・政治的影響のみならず、技術的観点や宇宙開発への寄与といった幅広い視点から、その重要性を考察します。

ICBMの特徴

ICBM(大陸間弾道ミサイル)は、他の弾道ミサイルと比較して射程や速度が大きな特徴であり、軍事戦略において極めて重要な役割を果たします。
特に、その射程と飛行速度、さらに現代技術による進化がICBMの価値を一層高めています。
以下では、ICBMの射程や速度、技術的な進化について詳しく解説します。

射程と速度

ICBMの射程は5,500km以上であり、これは他の弾道ミサイルに比べて圧倒的に長距離です。
例えば、中距離弾道ミサイル(IRBM)は約3,000kmから5,500km、短距離弾道ミサイル(SRBM)は約1,000km未満の射程に限定されます。
この長射程により、ICBMは発射地点から遠く離れた敵国本土への直接攻撃が可能であり、戦略的な威圧効果を発揮します。
また、飛行速度は通常、音速の10倍以上に達し、地球規模の目標に対して約30分以内に到達可能です。
この高速性は、敵に迎撃や防御の準備をさせる時間を極限まで削減する要因となっています。

他の弾道ミサイルと比較すると、ICBMはその性能によって戦術的な役割ではなく、戦略的な目的に特化している点が際立ちます。
短距離や中距離ミサイルは局地的な戦場での使用を想定していますが、ICBMはその射程によって国際的な軍事バランスを左右する存在となっています。
また、ICBMの高速飛行能力は、発射直後の上昇段階から大気圏外を通過し、目標に向かう再突入段階まで、一連のフェーズで敵の迎撃を困難にする要因となっています。

現代のICBM技術

現代のICBMは、その設計と技術において大きな進化を遂げています。
特にMIRV(Multiple Independently Targetable Reentry Vehicle、複数個別誘導再突入体)の採用は、ICBM技術の中でも革命的な進歩とされています。
MIRVは、一つのミサイルに複数の弾頭を搭載し、それぞれ異なる目標に向けて独立して誘導することを可能にします。
これにより、敵の防衛システムを圧倒し、同時に複数の戦略目標を攻撃する能力を持つようになりました。
この技術は、単一のミサイルで高い効果を発揮するため、防衛システムに対するコスト効率の高い対抗手段となっています。

また、固体燃料ミサイルの普及も重要な進化の一つです。
固体燃料は液体燃料と比較して長期間の保管が可能であり、迅速な発射を実現します。
これにより、敵の先制攻撃を受けるリスクを軽減し、即応性を高めることができます。
さらに、固体燃料の採用によってミサイルのメンテナンスコストも削減され、より安定した運用が可能になっています。

デコイや電子妨害装置の利用も現代ICBMの特徴的な技術です。
デコイは、実際の弾頭と同じように見える偽の目標を発射し、敵の迎撃システムを混乱させる役割を果たします。
また、電子妨害装置は敵のレーダーや通信システムを妨害し、迎撃の精度を低下させる効果があります。
これらの技術の導入により、ICBMは防御システムを突破する可能性がさらに高まり、抑止力としての価値が一層高まっています。

ICBMの歴史

ICBM

ICBM(大陸間弾道ミサイル)の歴史は、第二次世界大戦中の技術的発展から始まり、冷戦時代を通じて急速に進化しました。
その後の国際的な軍縮努力や新興国の技術導入も含めて、ICBMは現代に至るまで重要な軍事的存在であり続けています。
以下では、ICBMの発展を歴史的な観点から詳しく見ていきます。

第二次世界大戦とその後の発展

ICBMの概念は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって開発されたV-2ロケットにその起源を持ちます。
V-2は、当時としては画期的な液体燃料ロケットであり、ドイツからイギリスやベルギーの都市を攻撃するために使用されました。
しかし、ドイツの野心はさらに大きく、Projekt Amerikaと呼ばれる計画では、ニューヨークなどのアメリカの都市を攻撃可能な大陸間弾道ミサイル(A9/A10ロケット)の開発を目指していました。
この計画の一部として、V-2を基盤にした多段式ロケットの試験が行われましたが、戦争の終結により実戦投入されることはありませんでした。

戦後、アメリカは「ペーパークリップ作戦」によって、ドイツのロケット技術者であるヴェルナー・フォン・ブラウンらを招聘し、ICBMや宇宙開発の基盤となる研究を進めました。
一方、ソ連も同様にドイツの技術と人材を活用し、自国のロケット研究を開始しました。
この時期の技術移転と研究開発が、米ソ両国におけるICBM競争の出発点となりました。

冷戦時代の進展

冷戦時代におけるICBMの発展は、米ソ間の激しい軍事技術競争によって推進されました。
アメリカでは、アトラスやタイタンといった初期のICBMが開発され、特にアトラスは1959年に配備が開始されました。
タイタンはその後継機として設計され、より大型で高性能な特性を持ち、アトラスを凌ぐ性能を実現しました。

ソ連では、R-7セミョルカが世界初のICBMとして1957年に初飛行を成功させました。
このミサイルは同年10月にスプートニク1号を打ち上げるためのロケットとしても使用され、人類初の人工衛星を宇宙に送り出しました。
さらに、R-7の技術は有人宇宙飛行プログラムにも転用され、1961年にはユーリ・ガガーリンが世界初の宇宙飛行を達成しました。
これらの成果は、ICBMの軍事的用途を超え、科学技術の進歩にも大きく貢献しました。

冷戦期には、ICBMの開発が量的および質的に進化を遂げました。
米ソは核兵器搭載可能なICBMの配備を競い、ミサイルの精度、射程、信頼性の向上を目指しました。
また、潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の導入により、ICBMの運用の柔軟性がさらに高まりました。

冷戦後の展開

冷戦の終結後、ICBM開発の勢いは一時的に減速しましたが、完全に停止することはありませんでした。
1990年代には、START(戦略兵器削減条約)により、アメリカとロシアは配備済みのICBMと核弾頭の削減に合意しました。
これにより、両国間での核兵器競争は一定の歯止めがかかりましたが、新しいICBMの開発は続きました。

例えば、中国はDF-41やDF-5などのICBMを開発し、射程や精度の向上を図りました。
ロシアもRS-28サルマト(通称:サタン2)を開発し、最大で15個の核弾頭を搭載可能な能力を誇ります。
これらの新型ICBMは、MIRV技術や超音速滑空体の搭載によって迎撃困難性が向上し、現代の軍事戦略において重要な位置を占めています。

一方、新興国によるICBM技術の取得も注目されています。
インドはAgni-Vを開発し、北朝鮮もHwasongシリーズを通じてICBM技術を進化させました。
これらの国々は、ICBMを保有することで国際的な影響力を高めるとともに、自国の安全保障を強化する目的を持っています。

ICBMの歴史は、技術の進化と国際的な安全保障の変遷を映し出すものであり、その発展は今後も注目され続けるでしょう。

ICBMの運用と発射プラットフォーム

ICBM(大陸間弾道ミサイル)は、その威力と戦略的価値を最大限に活用するため、複数の発射プラットフォームが設計されています。
各プラットフォームには、それぞれの運用上の利点と欠点があり、国家の軍事戦略に応じて適切に選択されています。
本章では、陸上発射、海中発射、その他の方式について詳細に解説します。

陸上発射

陸上発射は、ICBMの最も基本的な発射方式の一つであり、サイロ発射とモバイル発射の二つの形式に分類されます。
サイロ発射は、ICBMを地下に掘られた固定式の発射施設に格納する方式です。
この形式の最大の利点は、防御力の高さにあります。
サイロは厚いコンクリートや鋼鉄で覆われており、敵の先制攻撃に対して一定の耐久性を持っています。
また、発射準備が迅速に行えるため、即応性にも優れています。
ただし、サイロの位置は固定されているため、敵に位置を特定されやすく、事前攻撃の対象となるリスクが高い点が欠点です。

一方、モバイル発射は、ICBMをトラックや装甲車両に搭載し、地上を移動させながら運用する形式です。
この方式の利点は、発射地点を柔軟に変更できるため、敵の偵察や攻撃から逃れる可能性が高い点にあります。
特にロシアや中国では、道路を利用したモバイル発射システムが採用されており、隠密性を高めるための重要な手段となっています。
ただし、移動中のメンテナンスや発射準備に時間がかかる場合があり、運用コストが高くなることが課題です。

海中発射(SLBM)

潜水艦発射型ICBM(SLBM)は、ICBMの戦略的重要性をさらに高める技術です。
この形式では、ICBMを専用の弾道ミサイル潜水艦に搭載し、海中から発射することが可能です。
潜水艦は広大な海域に潜航することで敵に発見されにくく、隠密性が非常に高いという特性を持っています。
また、潜水艦の移動能力によって発射地点を柔軟に選択できるため、戦略的な自由度が大きく向上します。

SLBMは、陸上発射に比べて敵の迎撃を回避しやすく、報復攻撃の手段としても非常に効果的です。
この特性は、核抑止力を強化する重要な要素となっています。
たとえば、アメリカの「トライデント」システムやロシアの「ブルラヴァ」ミサイルは、現代のSLBMの代表例として知られています。
一方で、潜水艦の建造や維持には莫大な費用がかかるため、限られた国家のみがこの能力を保有しています。

その他の方式

陸上や海中以外の発射方式として、鉄道発射プラットフォームも存在します。
この方式では、ICBMを鉄道車両に搭載し、広大な鉄道路線を利用して発射地点を移動させることができます。
ロシアの「RT-23 モロデツ(SS-24)」は、この形式の代表例です。
鉄道発射の利点は、モバイル発射と同様に発射地点を柔軟に変更できることと、鉄道路線のネットワークを活用して隠密性を確保できる点にあります。

しかし、鉄道発射にはいくつかの制約もあります。
まず、専用の鉄道路線や発射施設を整備する必要があり、そのコストは非常に高額です。
また、鉄道の移動には一定の制限があり、完全な隠密性を維持するのが難しい場合があります。
それでも、鉄道発射は固定サイロやモバイル発射に対する補完的な手段として、戦略的に有用な選択肢となっています。

以上のように、ICBMの発射プラットフォームはその運用目的や戦略に応じて多様な形式が採用されています。
各方式には独自の利点と欠点があり、国家の軍事的目標に基づいて最適な選択が行われています。

ICBMの軍事戦略における役割

ICBM

ICBM(大陸間弾道ミサイル)は、現代の軍事戦略において核抑止力の中核的な役割を担っています。
その長射程と高速性により、敵国への確実な攻撃能力を保持するだけでなく、戦略的な均衡を維持するための重要なツールとして機能しています。
以下では、相互確証破壊(MAD)理論や核抑止力としてのICBMの位置づけ、さらに弾道ミサイル防衛(ABM)システムとの関係について詳しく解説します。

相互確証破壊(MAD)理論

相互確証破壊(Mutual Assured Destruction、MAD)理論は、核兵器を保有する国同士が互いに相手を破壊できる能力を持つことで、実際の核戦争を抑止する考え方です。
この理論において、ICBMは重要な役割を果たします。
長射程と高い破壊力を持つICBMは、敵の主要都市や軍事施設を確実に攻撃できる手段として、核戦力の中核を形成します。
たとえ先制攻撃を受けても、残存するICBMが反撃により敵に壊滅的な被害を与える能力を保持することで、核戦争の発生を抑止するのがMAD理論の本質です。

この理論の下では、各国が十分な数のICBMを保持し、敵に対する報復能力を維持することが安全保障の基本とされています。
ICBMは、その固定サイロやモバイルプラットフォームにより、敵の先制攻撃から完全に破壊されるリスクを最小限に抑えています。
また、潜水艦発射型ICBM(SLBM)の導入により、海中からの隠密性の高い報復能力も確保されています。

核抑止力としての位置づけ

核抑止力とは、敵が核攻撃を行うことを防ぐために、自国が十分な核報復能力を保持している状況を指します。
ICBMは、その長射程と迅速な発射能力により、核抑止力の主要な構成要素となっています。
ICBMは、通常、即応態勢で保持されており、敵が攻撃を試みた場合でも迅速に発射可能です。
これにより、敵に対して「核攻撃を行えば報復が避けられない」という強力なメッセージを送ることができます。

また、ICBMの配備は、地政学的なバランスにも影響を与えます。
アメリカ、ロシア、中国などの主要国がICBMを保有することで、これらの国々が核抑止力を通じて国際的な影響力を行使する基盤が形成されています。
同時に、新興国によるICBMの開発は、地域的な安全保障環境に新たな緊張をもたらす要因ともなっています。

弾道ミサイル防衛(ABM)との関係

ICBMの進化に伴い、弾道ミサイル防衛(Anti-Ballistic Missile、ABM)システムの開発も進められてきました。
ABMシステムは、敵のICBMを迎撃することで、その攻撃を無効化することを目的としています。
代表的なABMシステムとしては、アメリカの「Ground-Based Midcourse Defense(GMD)」やイスラエルの「Arrow」、ロシアの「A-135」などがあります。
これらのシステムは、高高度および大気圏外でICBMを迎撃する技術を用いて、核攻撃の脅威を低減しようとしています。

しかし、ABMシステムの開発には大きな課題もあります。
現代のICBMは、MIRV(複数個別誘導再突入体)やデコイ技術を備えており、これにより迎撃の難易度が大幅に上昇しています。
MIRV技術を搭載したICBMは、一つのミサイルが複数の弾頭を放出し、それぞれが独立して異なる目標を攻撃可能です。
この特性は、ABMシステムにとって迎撃対象が増加することを意味し、防御システムを圧倒する可能性を高めます。

デコイ技術も、防衛システムに対する大きな挑戦です。
アルミニウム製の偽装目標や電子妨害装置を用いることで、レーダーや迎撃システムを混乱させ、実際の弾頭の特定を困難にします。
これらの技術により、ICBMはABMシステムを回避する能力をさらに強化しており、核抑止力を維持する重要な要素となっています。

結果として、ICBMとABMシステムの技術競争は今後も続くと考えられます。
各国は、攻撃と防御のバランスを保つために、より高度な技術の開発を進めていくでしょう。

各国のICBM保有状況

ICBM(大陸間弾道ミサイル)は、国際的な軍事バランスにおいて極めて重要な役割を果たしており、その保有状況は各国の安全保障政策に直接影響を与えています。
アメリカやロシア、中国をはじめとする核保有国は、ICBMを戦略的な核抑止力の中核として運用しています。
以下では、主要国の代表的なICBMとその性能について詳しく解説します。

アメリカ

アメリカは、世界で最も洗練されたICBMシステムを保有する国の一つです。
代表的なICBMとしては、「LGM-30G ミニットマンIII」が挙げられます。
このミサイルは射程が約14,000kmで、最大3つの核弾頭を搭載可能なMIRV技術を備えています。
固体燃料を使用しており、即応性が高いことが特徴です。
また、アメリカは次世代ICBM「LGM-35 センチネル」を開発中であり、より高度な性能と信頼性を目指しています。

ロシア

ロシアは、ICBMの保有量と性能においてアメリカに匹敵する能力を持っています。
特に「RS-28 サルマト(NATOコード名:サタン2)」は、現代のICBMの中でも最高峰の性能を誇ります。
射程は18,000km以上で、最大15の核弾頭を搭載可能なMIRV技術を持ち、さらにデコイや電子妨害技術を備えています。
その他にも、「RT-2UTTH トーポリM」や「RS-24 ヤールス」など、多様なICBMを運用しています。

中国

中国は、近年ICBMの開発と配備を急速に進めています。
「DF-41(東風-41)」はその代表例であり、射程は12,000〜15,000kmに達します。
最大10の核弾頭を搭載可能で、アメリカ本土を含むほぼ全世界を攻撃範囲に収めています。
また、「DF-31」や「DF-5」なども配備されており、これらは中国の戦略核戦力の中核を形成しています。

フランス

フランスは、ICBMではなく潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を主に運用していますが、「M51」ミサイルがその代表例です。
M51は射程8,000〜10,000kmを持ち、複数の核弾頭を搭載可能です。
このミサイルは、フランスの核抑止力を海洋に移行させる戦略の一環として運用されています。

イギリス

イギリスもまた、SLBMを中心とした核戦力を運用しています。
「トライデントII D5」は、アメリカと共同開発されたミサイルであり、射程12,000kmを誇ります。
イギリスの核抑止戦略は、専ら潜水艦発射型ミサイルに依存しており、陸上配備のICBMは保有していません。

インド

インドは、新興国としてICBMの開発を進めています。
「Agni-V」は、射程7,000〜10,000kmを持つ三段式固体燃料ICBMで、インドの戦略核戦力における中核的存在です。
また、より射程の長い「Agni-VI」も開発中で、最大12,000kmに達すると推測されています。

北朝鮮

北朝鮮は近年、ICBMの開発を進展させています。
「火星-15(Hwasong-15)」や「火星-17」は、射程13,000〜15,000kmに達し、アメリカ本土への到達が可能とされています。
北朝鮮のICBMは、核抑止力と政治的交渉力を高める目的で配備されていると考えられています。

イスラエル

イスラエルは、公式にはICBMの保有を認めていませんが、「ジェリコIII」がその代表例とされています。
このミサイルは射程11,500kmを持ち、核弾頭を搭載可能とされており、イスラエルの核抑止力の一端を担っています。

各国が保有するICBMは、それぞれの地政学的な状況や戦略的目標に応じて設計されており、その性能も多様です。
ICBMは国家間の抑止力を支える重要な兵器であり、今後も技術革新が進む中でその役割はさらに進化していくでしょう。

ICBMの未来

ICBM

ICBM(大陸間弾道ミサイル)は、冷戦時代から現在に至るまで、軍事技術と戦略の最前線に位置してきました。
未来においても、ICBMは新技術の導入や国際的な軍縮努力、新興国の技術発展への対応といった課題に直面しながら進化していくと予測されています。
以下では、ICBMの未来を形作る主要な要素について詳しく解説します。

新技術の導入

現代のICBMは、新たな技術革新によってその能力をさらに向上させています。
特に注目されるのが、超音速滑空体(HGV: Hypersonic Glide Vehicle)の開発です。
HGVは従来の弾道ミサイルと異なり、大気圏内を超音速で滑空しながら目標に向かいます。
この技術により、従来のICBMよりも低高度で不規則な飛行を可能にし、敵の迎撃システムを回避する能力が飛躍的に向上します。
例えば、ロシアの「アバンガルド」や中国のHGV計画は、ICBM技術の新たなフロンティアを切り開いています。

また、人工知能(AI)や機械学習技術の導入もICBMの進化に寄与しています。
AIは、飛行中の精密な誘導や標的への追尾能力を向上させるだけでなく、システムの自己診断やメンテナンスの効率化にも役立っています。
これにより、ICBMはより信頼性が高く、長期間にわたって運用可能な兵器となっています。

サイバー戦争への対応

サイバー戦争の台頭に伴い、ICBMの運用におけるサイバーセキュリティの重要性が増しています。
サイバー攻撃によるICBMの制御システムの侵害は、重大な国家安全保障上のリスクをもたらす可能性があります。
これに対応するため、各国はICBMのシステムを強化し、不正アクセスや操作を防ぐための多層的なセキュリティ対策を講じています。
また、量子暗号技術の導入によって通信の安全性を高める試みも進められています。

国際的な規制と軍縮の課題

ICBMの普及を抑制するため、国際社会ではさまざまな軍縮条約が締結されています。
例えば、START(戦略兵器削減条約)やINF(中距離核戦力全廃条約)は、核兵器搭載ミサイルの削減や運用制限を目的としています。
これらの条約は、冷戦期における軍拡競争を抑制するための重要な枠組みとして機能しました。

しかし、近年では新しい課題が浮上しています。
特に、新興国によるICBM技術の開発が進む中、従来の軍縮条約がその規制範囲を十分にカバーできていない点が指摘されています。
また、既存の軍縮条約が一部の主要国間でのみ有効であるため、新興国や非国家主体が開発するICBMに対する包括的な枠組みが求められています。

新興国の技術開発への対応

インドや北朝鮮などの新興国は、ICBM技術の開発を進めることで国際的な影響力を強化し、自国の安全保障を高めようとしています。
例えば、インドの「Agni-V」や北朝鮮の「火星シリーズ」は、新興国が独自にICBMを開発し、戦略核戦力を拡大している典型例です。

これに対し、国際社会は新興国の技術開発を抑制するための外交的努力を強化する必要があります。
技術移転の監視や規制の強化に加え、技術的支援を通じた平和的な利用への誘導も重要な戦略となります。
また、新興国との対話を通じて透明性を確保し、ICBM技術の軍事利用を最小限に抑える努力が求められます。

ICBMの未来は、新技術の進化と国際的な安全保障環境の変化によって形作られていきます。
この進化が抑止力を強化しつつも、平和と安定を損なわないよう、国際社会の協調が不可欠です。

まとめ

ICBM(大陸間弾道ミサイル)は、第二次世界大戦中の技術から発展し、冷戦時代を通じて核抑止力の象徴としてその地位を確立しました。
現代においても、ICBMは軍事戦略の中核として機能しており、各国の安全保障政策や国際的な軍事バランスに大きな影響を与えています。

ICBMの特徴である長射程や高速性、そしてMIRVや超音速滑空体(HGV)といった最新技術の導入は、その攻撃力と抑止力をさらに高めています。
一方で、サイバー戦争への対応や弾道ミサイル防衛(ABM)システムとの技術的な競争も激化しており、ICBMは単なる兵器を超えた高度な戦略的資産として位置付けられています。

また、国際的な軍縮条約や規制の枠組みが進化する一方で、新興国や非国家主体による技術開発の進展が新たな課題を生み出しています。
ICBMの運用と技術開発を適切に管理し、国際社会全体の安全保障を確保するためには、各国間の協力と信頼の構築が欠かせません。

ICBMの未来は、新技術の進化と国際情勢の変化によって形作られていきます。
抑止力としての役割を維持しつつも、核兵器の非拡散や軍縮の促進といった国際的な目標を達成するために、技術と政策の両面で新たな取り組みが求められるでしょう。

ミレイ大統領とは何者?政策や公約などわかりやすく解説!

-トレンド

© 2024 ザッタポ Powered by AFFINGER5